「Webデザインスクールを卒業したのですが、なかなか仕事につながりません」
私はこれまで、フリーランスのWebデザイナーを目指す方々から数多くのご相談をいただいてきましたが、その中でも特に多いのがこの悩みです。
半年から1年ほどかけてWebデザインを学び、PhotoshopやFigmaなどの操作方法を身につけた。ポートフォリオも制作し、クラウドソーシングにも登録した。
ところが、肝心の仕事が取れない。
こうした方に対して「もっとデザインスキルを磨きましょう」「営業活動を頑張りましょう」というアドバイスを見かけることがあります。
もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。
ただし、私はこの問題について、単純に個人のスキル不足や営業力不足だけでは説明できないと考えています。
なぜなら、生成AIの普及によって、Web制作の仕事の発注環境そのものが変わり始めているからです。
今回は、従来のWeb制作市場と現在の違いを整理しながら、これからWebデザイナーとして仕事を獲得していくために必要な考え方について解説します。
動画でも解説しています
今回の内容については、YouTubeでも4つの図解を使いながら解説しています。
動画で学びたい方は、こちらもぜひご覧ください。
1. Webデザインスクールを卒業しても仕事が取れないのはなぜか?
Webデザインのスキルを習得することと、仕事を獲得することは別問題
まず最初に考えていただきたいのが、Webデザインのスキルを習得することと、そのスキルを使って仕事を獲得することは別問題だという点です。
例えば、Photoshopを使ってバナーを制作できるようになったとしても、それだけでバナー制作の仕事が獲得できるとは限りません。
FigmaでWebサイトのデザインができるようになった場合も同様です。
なぜなら、仕事が成立するためには、自分のスキルだけではなく、そのスキルを必要とする発注者の存在が欠かせないからです。
どれだけ優れた制作スキルを持っていても、それを必要とする人がいなければ、仕事にはつながりません。
スキルアップだけでは解決できない問題もある
仕事が獲得できないとき、多くの方は自分のスキルが足りないのではないかと考えます。
そこで、さらに新しいツールを学んだり、別のWebデザイン講座を受講したりするわけです。
もちろん、実際に制作スキルが不足していることもあるでしょう。
ただし、発注者側のニーズそのものが変化しているのであれば、スキルアップだけでは解決できない可能性があります。
この問題を理解するために、まずは従来のWeb制作市場の仕組みから振り返ってみましょう。
2. 従来のWeb制作市場は「スキルの切り売り」で仕事が成立していた
Web制作業務の一部分を外注する仕組み

従来のWeb制作市場では、制作工程を細分化し、その一部分を外部のWebデザイナーやフリーランスに発注するという仕事の形が一般的に成立していました。
例えば、Webサイト制作であれば、デザイン、コーディング、画像加工など、それぞれの工程に応じて仕事が発生します。
その中で「バナーを1枚制作してほしい」「このデザインをコーディングしてほしい」といった依頼を請け負うことができたわけです。いわば、自分の持っているスキルの一部分を提供することで報酬を得る「スキルの切り売り」です。
こうした仕事の形は、Webデザインを学び始めた方にとっても比較的取り組みやすいものでした。
クラウドソーシングによって小さな仕事から始められた
クラウドワークスやランサーズ、ココナラなどのサービスも、こうした仕事の受発注を支えてきました。
発注者は必要な作業を切り出して依頼し、受注者は自分が対応できる業務を選んで応募する。そのため、まだ十分な制作実績を持っていない方でも、小さな案件から経験を積み重ねることができました。
もちろん、現在でもこうした仕事がなくなったわけではありませんが、生成AIが普及したことで、この市場構造が大きく変わり始めています。
3. 生成AIによってWeb制作の仕事はどう変わるのか?
発注者自身で対応できる制作業務が増えている

生成AIが普及したことで、これまで専門のWebデザイナーに外注していた仕事の一部を、発注者自身で対応できるようになってきました。
例えば、広告用の画像素材の生成や、キャッチコピーのアイデア出し、簡単なWebページの制作などです。
以前であれば専門的な知識や制作ツールが必要だった業務も、AIを活用することで対応のハードルが下がっています。
ここで重要なのは、AIで制作したものがプロのWebデザイナーと同じクオリティになるかどうか、という話ではありません。発注者にとっては、必ずしも完璧なデザインが必要なわけではないからです。
場合によっては「自分たちで対応できるのであれば、今回は外注しなくてもよい」と判断することもあるでしょう。
こうした変化が積み重なることで、従来のWeb制作市場にも影響が出てくると考えられます。
細分化された制作業務ほどAIによる代替が進みやすい
特に、作業内容が明確になっている業務ほど、AIを活用しやすい傾向があります。
例えば、既存のデザインを別サイズに展開する作業や、完成したデザインをもとにコーディングする作業などです。こうした仕事は、発注者自身がAIを使って対応したり、社内で作業を完結させたりできる可能性があります。
その結果、従来のように制作業務を細分化して外注する機会が減っていくことも考えられます。
Webデザインの仕事そのものがなくなるわけではない
ただし、私はWebデザインという仕事そのものがなくなるとは考えていません。WebサイトやLP、広告バナーなどの制作物が不要になるわけではないからです。
むしろ、Web上で商品やサービスを販売したり、見込み客を集めたりするためには、今後もさまざまな制作物が必要になるでしょう。
問題は、制作物そのものが必要なくなることではなく、その制作業務をどのような形で発注するのかが変わっていくという点です。
つまり、Webデザインの仕事が消えるというよりも、Webデザイナーに求められる役割が変わっていくと考えた方がよいと思います。
4. デザインスキルを磨くだけでは仕事が増えない理由
発注ニーズがなければ仕事は成立しない

ここで、もう一度考えていただきたいことがあります。
仕事が取れないWebデザイナーが、さらに半年間デザインの勉強をしたとします。
Photoshopがもっと上手になった。Figmaも使いこなせるようになった。コーディングまでできるようになった。
それで仕事が増えるのでしょうか?
もちろん、スキルアップによって受注できる仕事が増える可能性はあります。ただし、どれだけ技術を磨いても、それを必要とする発注ニーズが存在しなければ仕事にはなりません。これは、Webデザイナーを目指す方にぜひ理解していただきたいポイントです。
発注者が求めているのは「制作作業」ではなく「課題解決」
例えば、LPから思うように問い合わせが発生しない企業があったとします。
その企業が抱えている問題は、単純に「LPのデザインが古い」ということなのでしょうか?
もちろん、デザインに問題がある場合もあります。ただし、実際にはページの構成や訴求内容、広告との整合性など、さまざまな要因が考えられます。
そのため、発注者にとっては、単にデザインをきれいにしてくれる人よりも、問題点を整理して改善案を提案してくれる人の方が頼りになるかもしれません。
集客に困っている企業でも同じことが言えます。
単に広告バナーを制作するだけではなく、広告をクリックした後のLPや、その後の問い合わせにつながる流れまで理解している人であれば、より幅広い相談ができるでしょう。
つまり、これからは「自分がどのような制作スキルを持っているか」だけではなく、「そのスキルを使って、どのような問題を解決できるのか」という視点が重要になるのです。
5. これからのWebデザイナーに必要な仕事の取り方
自分のスキルとAIを組み合わせてサービスを作る

では、これからフリーランスのWebデザイナーとして仕事を獲得するためには、どうすればよいのでしょうか?
私が重要だと考えているのが、自分の持っているスキルと生成AIを組み合わせて、クライアントの課題に応えるサービスを作るという考え方です。
例えば「LPを制作します」とアピールするだけでは、他のWebデザイナーとの違いがわかりにくい場合があります。
しかし、特定の業界に絞って、LPの企画構成からデザイン、公開まで一式で提供するサービスであればどうでしょうか。
あるいは、すでにLPを持っている企業に対して、問題点を整理して改善案を提案するサービスでもよいかもしれません。
このように、自分の持っている制作スキルを組み合わせることで、発注者にとってわかりやすいサービスを作ることができます。
サービスの提供内容・料金・納期を明確にする
サービスを作る際には、提供する内容だけでなく、料金や納期などを明確にしておくことも重要です。
発注する側からすると、何をどこまで対応してくれるのかわからない相手には、なかなか仕事を依頼しにくいものです。
反対に、サービスの対象者や提供内容、料金、納期などが整理されていれば、依頼した場合のイメージが湧きやすくなります。
特に、まだ十分な制作実績がない方にとっては、こうしたサービス設計が重要になると考えています。
AIを活用して対応できる業務の幅を広げる
そして、サービスを提供する際には生成AIを積極的に活用していくことも大切です。
例えば、企画のアイデア出しや情報整理、文章の作成補助、コーディングなど、AIを活用できる業務は数多くあります。
もちろん、AIにすべてを任せればよいというわけではありません。
最終的な品質を判断し、必要な修正や調整を行うためには、人間の知識や経験が必要です。
ただし、AIを活用することで、これまで自分一人では難しかった業務にも対応しやすくなる可能性があります。
AIによって仕事を奪われることばかりを考えるのではなく、AIを使って自分の提供できる価値をどう広げるか。これからは、こうした考え方が必要になると思います。
6. LPデザイナーとして仕事をするために必要な考え方
LP制作だけでなくWeb集客の仕組みも理解する
ここまでの話は、LPデザイナーにも当てはまります。
LPは、単に見栄えのよいWebページを制作することが目的ではありません。
商品やサービスの魅力を適切に伝え、問い合わせや申し込み、購入など、事業者が求める行動につなげるためのものです。
そのため、LPのデザインだけでなく、どのような人がページを訪れるのか、どのような情報を必要としているのか、その後どのような流れで問い合わせや購入につながるのか、といった点まで理解することが大切です。
集客・接客・追客まで視野を広げる
例えば、LPへのアクセス自体が少ないのであれば、広告やSNSなどの集客方法を見直す必要があるかもしれません。
LPにアクセスは集まっているものの、問い合わせにつながらないのであれば、ページの構成や訴求内容を改善する必要があるでしょう。
さらに、一度問い合わせをした見込み客が購入に至らないのであれば、その後のメール配信などによるフォローが必要になる場合もあります。
こうした「集客・接客・追客」の流れを理解することで、LP制作を起点として、クライアントに提供できる支援の幅を広げられるようになります。
もちろん、最初からすべての業務に対応する必要はありません。
まずはLP制作のスキルを身につけ、その周辺にある業務や課題についても理解を深めていく。
そうした取り組みが、今後の仕事の獲得にもつながっていくと考えています。
7. まとめ:Webデザインを仕事につなげるために
今回は、Webデザインスクールを卒業しても仕事が取れない理由について、Web制作市場の変化という観点から解説しました。
Webデザインのスキルを身につけることは、仕事をするための大切な土台です。
ただし、制作スキルがあることと、実際に仕事を獲得できることは別問題です。
特に生成AIの普及によって、従来のように細分化された制作業務を外注するニーズは、今後も変化していくと考えられます。
だからこそ、これからは自分の持っているスキルを磨くだけでなく、そのスキルを使ってどのようなサービスを提供できるのかを考える必要があります。
自分が持っているスキルとAIをどう活用すれば、課題を抱えるクライアントにとって価値のあるサービスを提供できるのか。
こうしたことを考え続けることが、これからWebデザイナーとして仕事を獲得していくために重要だと私は思っています。
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